第五話 最後の関門

遂に自分のラーメンを完成させた志士。
いよいよラーメン屋開業に向けて動き出そうと思いきや、そこには最後の大きな越えなければならない問題があった。

それは親の説得である。

志士は実家の助けに家業を手伝っているので、簡単に「じゃあ辞めますんでよろしく~」というわけにはいかないのだ。
また親としては息子が未経験のラーメン業界に入るという訳の分からないことを言い出して賛成出来るはずもないだろう。
その頃の志士はもう38歳になっており、小学生の息子もいたのだからなおさらである。

ラーメン屋というのは廃業率がものすごく高い業界であり、10年続く店は1割も無いと言われている。
そんな業界でど素人が通用するはずがないと思うのは極めて当たり前の話である。
「嫁と子供を路頭に迷わせるつもりか」と言われ反対された。

しかし志士もここまで半端な気持ちでやってきたわけではないし、ここに辿り着くまでの道のりを考えると後に引くわけにもいかない。
お互いの思いがぶつかり合った結果、一つの妥協案に着地することとなった。
それは「昼は今まで通り会社で働き、夜だけラーメン屋をやってみる」というものだ。

親としては「どうせ通用しないだろうからやるだけやって現実を知れば諦めるだろう」という考え。
志士としては「どんな形であれやって軌道に乗せれば認めざるを得ないだろう」という考え。
お互いの思惑がありながら夜だけとはいえ開業が認められた。
遂に念願のラーメン屋開業が現実のものとなる日がやって来たのだ。

開業に向けて動き出したが、なにせ全くの未経験で何をどうしたらいいのか全く分からない。
お金も多くあるわけでもない。
ラーメンの研究の時と同様に手探りで一つ一つ進めていくしかなかったが、その工程は希望に満ちて楽しかった。
不動産屋さんを回って激安物件を探して家賃が3万円の物件を見つけた。
人通りも少ない5坪しかないお世辞にも条件が良いとは言えない物件であったがそこに決めた。
工務店の方に「とにかくお金がないので出来るだけ安く」と無理なお願いをしてお店を造って頂いた。
厨房機器も何が必要なのか分からない状態だったが、試行錯誤しながら中古で出来るだけ安くあがるようにかき集めた。
そうしてなんとかラーメン屋としての形が出来上がった。

長い道のりの末ようやく辿り着いた自分の居場所。

2009年4月4日。

「らーめん志士」が誕生した。

38歳のど素人のおじさんが嫁と子供の人生も背負って。

「さあ行くぜ!絶対に負けられない一世一代の大勝負だ!」


第六話 そして幕が上がる に続く

コメント

タイトルとURLをコピーしました