第四話 苦難の独学修行の果てに

本格的にラーメンの研究を開始した志士。
親切なお肉屋さんが豚骨を取り寄せて下さることになり材料を調達出来る様になったり、女将がスーパーを回って鶏ガラを買い集めてくれたりと周囲の協力のおかげでなんとかラーメン研究が出来る環境が整う様になってきた。

平日は会社で仕事で週末しかスープは炊けないので、毎週末は徹夜でスープを炊くという生活が続いた。
なにせ知識と料理の基本がないので全く手がかりが無い状態でとりあえず当てずっぽうでやってみる感じ。
当然そんなやり方で上手くいくはずもないのだけれど、ひたすらやってみては失敗するという作業を繰り返した。

やってもやっても前に進まない。
前に進んでいるのか後ろに下がっているのか、それすら分からない。
あまりの知識と経験の無さで前に進む方法が全く分からないのだ。

それはまるで、「図柄のない真っ白なジグソーパズルを組み立てているかのような」「コンパスを持たずに船で航海をしているかのような」そんな感覚だった。
とにもかくにも絶望的に手がかりが無いのだ。

志士は基本的に人より根性があるとか根気があるという人間ではない。
一つのことを困難に打ち勝ってやり遂げたことなど無かったし、うまく出来ないとすぐに投げ出してきた。

しかし、このラーメン屋になるという目標だけは投げ出すわけにはいかなかった。
自分らしい生き方を手に入れる為の唯一の希望だったから。
これを投げ出してしまったらこの先どうやって生きていけばいいのか分からない。
そんな風に無駄に固く思い込んでいたので、いくら失敗を繰り返そうがあきらめるという選択肢は無かった。

そんな生活をずっと送っていく間に、ラーメンの作り方の本を発見したり、自作ラーメンのホームページを発見したりすることが出来た。
そういうものを参考にしたり、ひたすら繰り返してきた失敗により徐々に自分の中のノウハウも蓄積されたりで、段々自分の思い描くラーメンに近いものが出来る様になっていった。

週末にスープを炊き、それを小分けにして朝の出勤前に一杯食べていきタレを調整する。
そんな日々を送って遂に自分のラーメンが完成した。
その時には初めてスープを炊いた日から5年以上の月日が流れていた。
(もう少し知識があったり、人に習ったり、器用だったり、賢かったりすれば絶対にそんなにかからない。ちょっと時間かかり過ぎだろと思う笑)

とにもかくにも「北九州の醬油ラーメン らーめん志士」のラーメンはこうやって誕生した。
自分らしく生きる為の武器をようやく手に入れたのだ。
遂にラーメン屋へのスタートラインに立った志士。
しかしそこにはもう一つの問題が立ち塞がっていたのだ・・・

独学修行時代のラーメン達


第五話 最後の関門 に続く

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